はむねっと語り場vol.2

語り場 7月4日の語り場ではハローワーク非正規相談員の仲村さんにお話いただきました。この方は10年以上ハローワークでお仕事をされており、リーマンショックやコロナ危機による就職難を第一線の窓口で支えてこられた方です。

今回リアル参加6名、web参加10名で開催しました。仲村さんの報告のあと、別のハローワークで働く非正規の相談員や、教育関係非正規の方々から、ご自身の職場の報告と共に本当に苦しいお声をお聞きして、参加者同士で共有しました。

以下 仲村さんからの報告

はじめまして。ハローワークの仲村と申します。今回お話をする機会をいただいてありがとうございます。

3/20の集会では、公募問題を中心に発言をさせていただきましたが、今回公募問題も含めハローワークで働く多くの非常勤の仲間たちの仕事についてまた、そして厳しい実態をこの場でお話しさせていただき、公務非正規労働の問題点について解決策を考える材料になればと思います。

 ハローワークは、憲法に定められた「勤労権の保障」のため、障害者や生活保護受給者の方など民間の職業紹介事業等では就職へ結びつけることが難しい就職困難者や人手不足の中小零細企業を中心に無償で支援を行う「雇用のセーフティネット」の中心的役割を担うところです。

ハローワーク(544所)の全国ネットワークによる支援のほかに、雇用対策協定に基づく自治体とのワンストップ窓口(339カ所)等により、地域密着型の就職支援を実施しています。 業務内容については、職業紹介、雇用保険、雇用対策(企業指導・支援)の3業務を一体的に実施することで、増加している就職困難者の方などへの就職支援を行っています。[組織上の位置づけ 厚生労働省→都道府県労働局→労働基準部(労働基準監督署)/雇用均等室/職業安定部(公共職業安定所:ハローワーク)]

ハローワークの仕事は幅が広く実はその多くが非常勤職員で回しています。これははむねっとのみなさんはご存知だとおもいますが、まだ一般の方利用する方々にはあまり知られていないことではないかと思います。

 その私たちの雇用問題ですが、メディアにも取り上げられることがあるなど知っている方も多いと思いますが、ハローワークの非常勤は、3年に一度、それまでの経験や実績に一切関係なく公開公募の対象とされ、自分が就いているポストを公共職業安定所に求人として提出されるとともに、継続勤務したいのなら公募に応募しなければならない。すなわち、安定所に求職者として登録し、紹介を受けて、他の応募者との選考に合格しなければ再び採用されないという仕組みです。  

そもそも、国家公務の非常勤職員は、国の予算査定によって毎年人数が見直され、予算の縮小があれば失業を余儀なくされるなど、雇用不安はとても大きいです。そこに加えての公募は、今就いているポストの業務が継続するにもかかわらず、選考を勝ち抜かなければ失業するという過酷な不安に陥れるものです。

入所当初私は学卒部門の相談員として、学生(中学生・高校生・特別支援学校生、専門学校生・大学生、大学院生等)の支援、学生の父兄への支援、相談も含まれます、また学卒求人(中卒求人、高卒求人、大卒等求人)の受付・受理、求人者への指導・助言等(人事担当者へ助言、公正採用選考指導等)を行っておりました。学生の支援としては管轄内の各学校に出向き、就職ガイダンスや職業講話を実施したり、進路指導教諭に対し助言を行ったり、来所する学生に対しては、就職が内定するまで個別に就職支援を行います。

中卒で就職した方に関しては、就職後事業所に出向き定着支援があり、3年間続きます。学生の個別支援には、職業相談はもちろんですが、自己理解支援、GATB(General Aptitude Test Battery=一般職業適性検査)の実施等も含まれます。 窓口に来所する学生の中には、内定がなかなか取れず、何をやっていいのかわからず、時には涙を流す学生もいます。

ハローワークに来所する学生は、私生活でいろいろと事情がある学生が多く来所します。親御さんにDVを受けている、親御さんが生活保護を受けており世帯分離をしなければならない、ホームレス学生等、自治体と連携して就職に導きます。

一番記憶に残っている相談案件は、小さな子供がいる女子学生を就職に導いたことがありました。最初の相談で彼女は「小さな子供がいると就職できないのではないか」と自信がありませんでしたが、私生活面での助言を行うなかで、徐々に自信をつけ、子育てと仕事の両立ができるような求人を開拓し、就職につなげることができました。

就職が決まった後に、彼女は小さな子供を抱き、ハローワークにお礼にきてくれました。私も心から嬉しく思い、本当にこの仕事をしていてよかったと思う瞬間でした。

学卒業務を経験した後、現在はハローワークの基幹業務でもある一般職業相談の窓口におります。ハローワークの窓口を利用する方々は、学卒同様、私生活でいろいろな問題を抱えている方、自己就職がうまくいかない方が多くいらっしゃいます。若年層の早期離職者、氷河期世代の方、年金だけでは暮らしていけない高齢者、手帳はないけれど障害を持った方等の雇用保険受給者や一般求職者に対して職業相談、求人開拓、および紹介、固有のニーズに合わせ求人情報の提供、応募書類の作成支援や採用面接時のアドバイス、公共職業訓練、求職者職業訓練の情報収集及び整理、受講希望者に対する就職支援計画書作成等、業務量も多く多岐にわたる業務をこなしているところです。

このように一般相談窓口でも、様々な方がいらっしゃるので対応に苦労することもありますが、失業者が最後に頼ってくる場所で非常に重要な役割を担っているのだと思います、職員と非常勤が一つになって求職者と求人を結び付けていく、どこの部門にいてもその目的は変わるものではないと思います、そして失業された方々が就職に結びついて内定が決まった時の笑顔を取り戻した瞬間は、この仕事をやっていてよかったと思う瞬間です。

私を含め非常勤の仲間達は、最初から多くの仕事ができたわけではありません。仕事の経験を積み重ねていく中で、正規職員と同じような、スキルを身に付けたものと思っています。ハローワークの仕事は、チームワークでする仕事で、また、ひとりの人の人生を左右させてしまう仕事です。ですから、職員や外部の関連機関と連携し、高い意識とやりがいと自信をもってやっていく仕事だと思っています。しかし、現実に目を向けますと、私たち非常勤職員は、期間業務職員で、常に雇止めのことを心配しなければなりません。  

過去に、雇用の更新には産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格をとっておかなければ、更新ができなくなると管理者に言われ、自費で産業カウンサラーとキャリアカウンセラーの資格を取得しました。同じ非常勤仲間には、経済的に大変で取得できない方もいれば、借金をしてまで資格を取得した方もいます。

私もそうですが、非常勤の仲間は、それぞれのスキルを資格だけで身に付けたわけではありません。仕事を経験していく中で身に付いたものだと思っています。なぜ公開公募で、他の方と競わなければならないのか、仮に新しい方と入れ替えられるであれば、職員の方々は最初から教育をしていかなければなりません。行政にとっても無駄な事ではないでしょうか。

私たち非常勤職員は、繁忙期だけ雇用され、閑散期には雇止めになるといったことであれは仕方がありませんが、私たちの仕事は年間を通してなくなることはありません。

ハローワークの職業相談の窓口の多くは非常勤職員です。

年々激しく正規職員が削減され、非常勤に置き換わっているだけです。 私は長く働かせていただいており4回公開公募経験をしましたが、たとえて言うと、さらし首に合うような感じ、やはりこれは受けている本人からすると残酷です、幸い今回更新はできましが、やはり熟視して考えていくと労働行政をちゃんときちっとやっていく私たち非常勤職員の立場の中で、その品質をちゃんときちんと保っていくことが必要なのではないかと思っています。

更新によって毎年変わったら、この品質を保てますか、いうことは正直思います。雇用の安定ということも含めて、広い意味で考えたときに、日本社会の安定ということを考えたときには、その一助を担う私たち非常勤にとっても重要な事と思います。 この公開公募の弊害ですが、ハローワークはマンパワーとチームで運営する業務が多いところですが、これまで同じチームで働いてきた仲間が公募によって競合者になってしまい、チームワークが成り立たなくなります。

また、公募の公平制にも問題があります。恣意的に選考が行われることもあります。雇止めは、管理者が公募を利用して、私的に気に入らない相談員や、私的にそのポストに就かせたい相談員がいるなど、雇用を操作する管理者もいるため、公募を悪用してターゲットとなる相談員を雇止めにするなどのパワハラ公募が後を絶ちません(*ほとんどの相談員が泣き寝入りで退職されるのです)。

私は組合に加入し、非常勤の労働条件や、職場環境の改善をめざす取り組みを通して、非常勤の仲間たちの声を集め、発信したり、組合で得た情報を、非常勤仲間に提供したりしながら非常勤の組合仲間づくりを続けていますが、その過程で所属の管理者からパワハラにあい、精神疾患に陥ってしまい退職に追い込まれたことがあるのですが、同じ非常勤として働く仲間に助けられ、組合に相談することができ、配置転換をしていただき続けられたという経験をしています(*一般職業相談の窓口でも来所される方の多くがパワハラによる退職、が多い例話す)。こういった経験から、組合の重要性、当事者仲間の大切さをとても強く感じています。

しかし、当事者の多くが声を上げることによって、かえって悪いほうに進んでしまうのではないかと怖くなってしまって黙ってしまうことのほうが多いです、自分の思いを発せない人がほとんどです。

更新に影響があるのではないかと不安になるからです。

私もそうでした。

自分の思いを発せないことによって、どんどん非常勤、当事者の世界、当事者一人ひとりの心の領域は狭まれてしまいます。公募問題を考える時にいつも思うのですが、自分も声を上げることでパワハラを受けた経験して、矛盾していることに声を上げる、伝える、これだけのことなのですが、当たり前のことのようで難しい、急に自分の言葉に自信がなくなり、怖くなって思わず言葉を飲み込んでしまう、私も仲間の助けがなければ声を出せず相談することなく辞めることを選択していたと思います。

そんな経験もあり、組合組織がない機関や、そもそも組合があっても相談できない方、また組合に加入していても、組合自体が機能していない等の方には、つながりたいという方は多いと多く、はむねっとの存在は心強いと思います。

今後も、私たちの置かれている立場を広く伝えていくことが重要かと思いますので、はむねっとのみなさまのご協力をいただきながら、同じ思いを共有できる場で非常勤の仲間を増やしていくこと、現場の非常勤仲間や地域の仲間とも協力し、はむねっとにつないでいこうと思います。

そして、何よりも学習を深めていくことが必要ですので、今後も様々な行動に参加していくことを決意して私の報告とさせていただきます。