今年度(2022年度)は、地方自治体で直接任用されている非正規公務員の多くに関係する「会計年度任用職員制度」がはじまってから3年目の年度です。このままいくと、今年度末には、全国の地方自治体で現職として働いている人が、いったん雇止めとなり、継続を希望する人は、再度の「公募」に応じなければならないという、大量の「雇止め/公募」が実施される見込みです。
はむねっとは、継続して必要とされる職に就いて問題なく働いている人を一律に「公募」にかけることは、大きな問題があると考えます。そのため、今年度末の全国での大量「雇止め/公募」をくい止めるアクションを起こしていきます。
#会計年度3年目公募は不合理
★注目レポート:山下弘之「緊急レポート:総務省『新通知』、厚生労働省『大量離職通知書』を活かす」(労働情報NAVI)
★関連国会質疑はこちらから
★再度任用に関する国の調査結果(リンクPDF 4~11頁参照)
★はむねっと2021年調査(将来への不安を抱えた人が9割以上)
★はむねっとに寄せられた声(更新の不安、雇用の安定を望む多くの声)
●“会計年度任用職員の任用期間の更新回数は2回まで”という法的決まりはありません
地方自治体で会計年度任用職員として働いている方のなかには、この職は、2回(3年)までは更新が可能で3年目の終わりには必ず公募を受ける必要がある、という説明を受けている方も少なくないと思います。ただ、これは、少なくとも法律上の決まりではありません。(そのため、地域によっても違いがあり、4回(5年)までは更新が可能という自治体や、更新に限度を設けていない自治体もあります。)
では、「2回までは更新が可能」という考え方が何に由来しているかと言えば、それは、国(総務省)が自治体に向けて出している会計年度任用職員制度の『事務処理マニュアル第2版』に基づくものです。このマニュアルには、次のことが書かれています。
「選考においては公募を行うことが法律上必須ではないが、できる限り広く募集を行うことが望ましい。例えば、国の期間業務職員については、(中略)再度の任用を行うことができるのは原則2回までとしている。(中略)再度の任用については、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、任期ごとに客観的な能力実証を行うよう、適切に対応されたい」(63頁 太字引用者)
つまり、ここに書かれているように、「2回までは更新が可能」という考え方は、国の非正規職員である「期間業務職員」の制度にならった考え方であり、それがマニュアル上、例示されている(だけのことな)のです。ましてや国においても、期間業務職員以外の、3/4以下の労働時間で働く「短時間非常勤職員」には「3年公募制」はありません。
※総務省事務処理マニュアル https://www.soumu.go.jp/main_content/000579717.pdf
●更新回数の上限を設けていない自治体も存在します
地方自治体では、たくさんの非正規職員が働いています。このうち、会計年度任用職員は、短時間・短期間の人を含めると約90万人います。そして、そうした非正規職員の多くが、職場で、基幹的で恒常的な仕事を担っています。保育士、図書館司書、博物館学芸員、社会教育指導員、相談員等々、多くの専門職が、会計年度任用職員として働いている実情もあります。本来、そうした、基幹的業務の担い手は、正規職員とすることが必要だと言われていますが、現状では、こうした専門職に多くの非正規職員が就いているのが実態です。
国の調査でも、かねてより、地方自治体には、長期継続的に働いてきた臨時・非常勤職員がいたことが明らかにされています。また、職場によっては、専門性が高い人ほど、非正規で、かつ、長期的に働いているという実態も明らかにされてきています。こうした人たちが、公共サービスの基幹部分を支えてきたのです。これまでも、更新を繰返しながら働いてきた人は、ただ、継続的に働いていることで自動的に更新をされてきたのではありません。勤務状況の確認や面談などを経て、更新に至っていました。そして欠員がでる場合に、一般の公募が行われてきたのです。
地方自治体によっては、会計年度任用職員制度施行後も、3年目公募などの年限を区切った公募は行わずに任用の継続をする団体もあることがわかっています。会計年度任用職員を、現職として働いている人も含め、一律に公募にかけることは、働き手にとっても、公共サービスの受け手の住民にとっても、マイナスです。また、現職を含めた公募は当事者に与える精神的抑圧が大きく、更新の可否をちらつかせたハラスメントなどにもつながりやすく、公正さとはかけ離れた制度です。
※『地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査結果』(2016年)に、「同一任命権者において10年以上同一人を繰り返し任用する事例のある団体」についての記載がある。
※東京都内区市町村の状況(なくそう官製ワーキングプア集会・東京実行委員会 作成資料)
●会計年度任用職員制度自体に問題があります
会計年度任用職員制度は、1年毎の任用を原則とした法律です。はむねっとは、継続して必要とされる職についても、会計年度任用をあてはめていく現在の「会計年度任用職員制度」には、大きな問題があると考えています。
先行して、3年ごとの公募が実施されている国家公務員の非正規職員(期間業務職員)の方たちが、すでに、こうした公募のあり方を問題化してきています。また、非正規の公務員にも、一般の労働法制にある「無期転換権」の導入などの、安心して業務にあたれるような制度設計が必要だという要求もこれまでに出されてきました。
一般の労働法制にある「無期転換権」も、実際には、無期化逃れの事例が後を絶たず、本来、雇用の安定をもたらすはずの制度が、十分に機能していないという指摘もなされてきています。しかし、非正規公務員に関わる法制度には、こうした安定任用の理念すら示されていません。
本来は、公務労働の分野こそ、民間に先んじて、安定雇用といった労働の基本理念が貫かれる必要があるのではないでしょうか。私たちは、今年度末に全国で行われる可能性が高い、本来、無用なはずの「公募」の実施をなんとしても辞めてもらいたいと考えます。
【関連情報】
【会計年度任用職員制度関係】
★随時更新中★
New!労運研レポート5月号より転載:「会計年度任用職員制度3年目の課題」 三澤昌樹(全国自治体労働運動研究会)
コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」 竹信 三恵子 : ジャーナリスト、和光大学名誉教授 東洋経済オンライン 2022年3月17日 https://toyokeizai.net/articles/-/538781
非正規公務員 遠い処遇改善 4分の3が女性「将来に不安」9割 日経新聞 2021年9月20日
あっさり切られるだけ? 「会計年度任用」1年の現実 朝日新聞 末崎毅、岡林佐和、編集委員・沢路毅彦 2021年5月23日 https://www.asahi.com/articles/ASP5J011KP4TULZU00X.html?ref=pc_rensai_long_479_article
【ハローワーク非正規職員関係】
ハローワーク職員「私たちだって雇い止め」、公務員“非正規リストラ”の深刻 ダイヤモンド編集部 2021.3.22 5:25 https://diamond.jp/articles/-/265797
ハローワーク非正規職員がいじめ・パワハラのまん延を告発、雇い止め不安が生む“地獄”『週刊女性』2021年5月4日号 https://www.jprime.jp/articles/-/20652
はむねっと語り場Vol.2 https://nrwwu.com/narrative_2/
チェンジオルグ ハローワーク非正規相談員を毎年解雇の恐怖にさらさないで!!
◆はむねっと要望書 「会計年度任用職員制度を見直してください」(2021年11月28日)
◆日本労働弁護団「会計年度任用職員制度に対する意見書」(2020年3月4日)
※情報は随時更新していきます。情報提供、大歓迎です。よろしくお願いします。