はむねっと語り場vol.1

3月20日に開催した緊急集会「官製ワーキングプアの女性たち コロナ後のリアル」に登壇してお話された学校司書の中村由美子さん。学校司書のやりがいや必要性、それから、ストライキを試みた初めての学校司書としてのお話もされました。この日は、他のスピーカーのお話もあり、限られた時間であったため、「もっと聞きたかった」という声が多く聞かれました。

そこで、はむねっとでは、改めて場を設定し、おひとりのお話をじっくり聞き、そして、お話を伺ったメンバーとの対話の場を設けようと、5月15日に、はむねっと語り場vol.1を開催しました。初回ということもあり、半クローズドの形で開催しました。

せっかくのお話ですから、スピーカーのご了承を得て、みなさんに共有できればと、はむねっとホームページ上に要約的に報告をあげることにしました。

【プログラム】進行などの案内

1.中村さんのお話

休憩

2.参加者とトーク

3.まとめ

はむねっと語り場vol.1

1.中村さんのお話

私は、現在、平日5日間、1日6時間45分拘束の、6時間勤務(+45分休憩)で働いています。以前は、非正規でも専門職として働いていたのですが、今は、会計年度任用職員という立場です。平日はすべて私が図書室にいるので、子どもたちは、図書室に行けば必ず私に会えるということになります。現在の勤務先は、児童数が約700名と、地域の中でも大規模校です。休憩時間には100人くらいの児童が図書館に押しかけ、200~300冊が貸し出されます。

学校には、たくさんの先生方がおられますが、「司書」という肩書は私だけです。子どもたちには、中村先生と呼ばれることもありますが、「司書さんと呼んでくれるとうれしいな」と伝えることで、司書という存在を覚えてもらうようにしています。子どもたちには、将来、司書が「書を司る人間なのだ」と気が付いてもらえればという希望もあります。

学校司書の仕事は、子どもたちの保護者からの「うちの子、読書をしないんです」といったご相談から、子どもが教室に居づらくて、図書室に来るときの対応まで幅広く、また学校で教える内容を超えて、子どもたちそれぞれの興味にあった本との出会いを探ることなども含まれます。読書をまったくしないだけでなく、じっと座っていることも難しかった子どもが、自分にあった本を手にすることで座って読むことができるようになったり、本を好きになったりすることが、大きな喜びです。

保健室に行くほどではないけれど、毎日開いていて毎日同じ司書がいる学校図書館は、子どもたちにとって大事な居場所です。

直接雇用で働いていることで、子どもたちのバックグラウンドを踏まえた支援や接し方をすることができます。また、使用者である教育委員会から、合理的な配慮が必要な子どもへの対応が業務の一環であるとされており、その接し方などのための専門の研修を受けることもしています。

小学校の前に、中学校で司書をしていました。その時に、今でいうパワハラとマタハラに遭い、懲罰研修を受講させられ、自主退職に追い込まれそうになったことがありました。先輩や組合の力を借りて、辞めることなく、出産をして育休もとり、職場復帰することができました。当時から6年雇い止め、6年目に再試験で受かれば、また新たに採用という形でした。試験では、一切経験は考慮しないと言われていて、再試験を受けた中で、私だけが不採用になりました。組合活動をしてものをいうから切られたと交渉し、3月末にストライキを一人で行い、再試験をうけ、ぎりぎりのタイミングで採用を勝ち取りました。

その経験から思うのは、雇用止めで泣き寝入りした人が今までたくさんいたこと、非正規とはいえ、専門職(特別職)だったことで、ストライキ権が合法であったことです。しかし、2020年度から始まった会計年度任用職員という今の立場は、ストライキ権を失ってしまっています。このことが、当事者たちにあまり意識されていないことについて、ストを打って辞めずに済んだ私は深刻に考えています。

そんな経過もあり、図書館ユニオンの学校司書分会を立ち上げて、分会長を務めています。労働運動の大切さや、私たちの持つ権利を勉強しながら、仲間を増やすとともに、処遇改善に向けた活動を行っています。

これまで学校司書として、中学校、小学校で働いてきて思うのは、そこで接した生徒たちに、「司書さんのお陰で、学校に来ることができた。図書室に来ることができたお陰で、学校を卒業することができた。もし、それがなかったら、今の私の生活はない」と言ってもらう経験をし、学校の中で、司書のいる意味を広げること、子どもたちにもワークルールを学ぶ場を提供することの必要性を痛感しています。

学校司書仲間の中には、1校に専従するのではなく、2校や3校を掛け持ちしている人もいます。でも、毎日、同じ人が図書室という同じ場所にいることが持つ意味、毎日同じところにいることで子どもたちにできる支援があることをより広い人たちに理解してもらい、利用者である子どもたちのための環境整備を進めていかなければならないと強く思っています。

2.参加者とトーク

中村さんのお話を聞いて、以下のような意見や感想、今後の課題が出ました。

  • 公務では専門性に重きを置かない。
  • 専門性と労働者性の関係、労働条件はかえって悪くなってきている。
  • 女性が培ってきた専門性を軽視、非正規公務員も職種ごとにギルドをつくり、ストライキをして待遇改善につなげないと
  • アメリカ移民労働者たちの初のストライキを描いた『パンとバラ ローザとジェイクの物語』を紹介。キャサリン・パターソン/著  岡本 浜江/訳  偕成社
  • 会計年度任用職員制度が始まり、この立場になった人からは、「ボーナスが出るようになったから、いいじゃない」と言われることも。そして、ストライキを経験したことのある人が減っていること、そもそも組合組織率が下がっていることで、団体交渉を知らない人が増えている。スト権がはく奪されていることの意味を、別途勉強会などを通じて広げていくことが重要ではないか。
  • 会計年度任用職員制度のスト権がない問題については、別の研究会でも、取り組んでいる人がいるので、連携できるとよい。
  • 「(雇用が不安定であることで)専門性が失われる」と書いたことがあったが、「専門性」の具体的内容が今日の話でよくわかった。

3.まとめ

小規模で、半分クローズドでの開催でもありましたが、中村さんのお話を聞いて、参加者は、こういった語り場の重要性を再認識することになりました。今後も、はむねっと語り場を継続していければと思った次第です。

緊急要望書「非正規公務員の統計から性別集計の表示をなくさないでください」

2021年5月4日

内閣人事局国家公務員制度担当大臣 河野太郎様

緊急要望書「非正規公務員の統計から性別集計の表示をなくさないでください」

公務非正規女性全国ネットワーク

東京都(後略) ・・・・・・

代表 渡辺百合子

日頃から、公務員制度のよりよいあり方へ向けた取組をいただき感謝申し上げます。

私たちは、非正規公務員の待遇改善に取り組むため、非正規公務員やその経験者を中心に、研究者、ジャーナリストも参加して立ち上げた全国組織です。

4月23日に、衆院内閣委員会で、河野太郎国家公務員制度担当相が、国民民主党の岸本周平議員とのやりとりの中で、内閣人事局ホームページに掲載されている「非常勤職員在職状況統計表」の非常勤職員数を示す欄の「うち女」との表記を訂正する考えを示した、という新聞報道に接し、大臣が、「修正させます」と応答しておられたことを確認しました。

私たちは、非正規公務員統計から、性別集計がなくなるとしたら、それは深刻な影響をもたらすと考え、この問題に取り組む全国ネットワークとして、急ぎ本要望をまとめました。非正規公務員の置かれている現状を把握し、改善に取り組む際、性別集計は不可欠なデータです。国や地方自治体で働く非正規公務員のうち、その約8割は女性です。こうした事実は、この問題の背景に、性別による格差の問題があることを明らかにしています。性別集計を行うことと、多様な性への配慮の課題は、同時並行で必要なことです。

2020年12月に国が策定した、第5次男女共同参画基本計画にも、「男女の置かれている状況を客観的に把握するため、(中略)業務統計を含む各種調査の実施に当たり、可能な限り男女別データを把握」とあり、「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会 報告書 ~誰一人取り残さないポストコロナの社会へ~」(2021年4月 28 日)においても、ジェンダーに関する視点を盛り込んだ施策の立案、実施につなげていくため、男女別データを収集し、分析を進めていくことが重要であると提言されています。

上記を踏まえ、以下の2点について要望します。

ご多用のところ恐縮ですが、6月7日までに文書にてご回答ください。

【要望事項】

1.非正規公務員の待遇改善に向けた取組を進めていくためにも、「非常勤職員在職状況統計表」をはじめとした公的な統計から、性別集計をなくさないでください。

2.性別格差の現状を踏まえ、非正規公務員の根本的な待遇改善を進めてください。

連絡先:http://nrwwu.com、メール hiseiki.koumu@gmail.com

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2021年5月4日

総務大臣 武田良太様

緊急要望書「非正規公務員の統計から性別集計の表示をなくさないでください」

公務非正規女性全国ネットワーク

東京都(後略) ・・・・・・

代表 渡辺百合子

日頃から、公務員制度のよりよいあり方へ向けた取組をいただき感謝申し上げます。

私たちは、非正規公務員の待遇改善に取り組むため、非正規公務員やその経験者を中心に、研究者、ジャーナリストも参加して立ち上げた全国組織です。

4月23日に、衆院内閣委員会で、河野太郎国家公務員制度担当相が、国民民主党の岸本周平議員とのやりとりの中で、内閣人事局ホームページに掲載されている「非常勤職員在職状況統計表」の非常勤職員数を示す欄の「うち女」との表記を訂正する考えを示した、という新聞報道に接し、大臣が、「修正させます」と応答しておられたことを確認しました。

私たちは、非正規公務員統計から、性別集計がなくなるとしたら、それは深刻な影響をもたらすと考え、この問題に取り組む全国ネットワークとして、急ぎ本要望をまとめました。非正規公務員の置かれている現状を把握し、改善に取り組む際、性別集計は不可欠なデータです。国や地方自治体で働く非正規公務員のうち、その約8割は女性です。こうした事実は、この問題の背景に、性別による格差の問題があることを明らかにしています。性別集計を行うことと、多様な性への配慮の課題は、同時並行で必要なことです。

2020年12月に国が策定した、第5次男女共同参画基本計画にも、「男女の置かれている状況を客観的に把握するため、(中略)業務統計を含む各種調査の実施に当たり、可能な限り男女別データを把握」とあり、「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会 報告書 ~誰一人取り残さないポストコロナの社会へ~」(2021年4月 28 日)においても、ジェンダーに関する視点を盛り込んだ施策の立案、実施につなげていくため、男女別データを収集し、分析を進めていくことが重要であると提言されています。

上記を踏まえ、以下の2点について要望します。

ご多用のところ恐縮ですが、6月7日までに文書にてご回答ください。

【要望事項】

1.非正規公務員の待遇改善に向けた取組を進めていくためにも、「非常勤職員在職状況統計表」をはじめとした公的な統計から、性別集計をなくさないでください。

2.性別格差の現状を踏まえ、非正規公務員の根本的な待遇改善を進めてください。

連絡先:http://nrwwu.com、メール hiseiki.koumu@gmail.com

公務非正規女性全国ネットワーク立ち上げと調査実施のお知らせ

Press Release

令和3(2021)年5月4日

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)

公務非正規女性全国ネットワーク立ち上げと調査実施のお知らせ

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと、代表:渡辺百合子、080-3442-6007)は、このたび、2021年3月20日に開催した緊急集会「官製ワーキングプアの女性たち コロナ後のリアル」の開催準備に当たった者が中心となり、公務非正規問題について継続して取り組む新たな団体「公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)」を立ち上げたことをお知らせします。

3月20日の集会には、多くの団体・個人からの賛同が集まり、全国のさまざまな現場から、深刻な現状の訴えが集まると同時に、問題の解決に向けてより多くの人たちが手をつなぎ、声を上げていこうという熱い応援のメッセージが寄せられました。また、当初の予想を上回る賛同金も集まり、この先も、活動を継続し、声を上げ続けていくことへの後押しをいただきました。

集会では、女性を働き手として広がってきた非正規公務問題が、2020年度からはじまった会計年度任用制度とコロナで、一層大きな課題として見えてきていることが共有されました。会計年度任用制度は、単年度雇用=不安定雇用を法定化した制度であり、単年度任用が厳格化されたことで、現場の働き手には不安が広がり、より声を上げにくい状況が広がってきたことも見えてきました。

また、公務現場の仕事は、一定の経験や知識を必要とするものも多く、対人援助職関係の資格が、国の制度として、新たに作られてきたものの、資格が、安定した職をもたらすものとはなっていない現状も共有されました。

さらには、直接雇用の非正規公務員以外の民間委託も広がっており、民間委託された公務現場でもたくさんの非正規の働き手が働いていることも確認されました。

不安定雇用の法定化や、公務の民間委託化によって、公務サービスは、いま、急速に悪化していっています。しかし、公務サービスの利用者は、子どもであったり、支援を必要とする大人(DV被害者、失業者など)であったりし、そうした人たちは、声を出しづらい立場にある人たちでもあるのです。

本来、私たち一人ひとりが、安心して暮らすための「公共」が、現場から、崩されていってしまっています。公共は、本来、利益を前提とした民間とは異なる役割をもつ領域であり、そうした場所を維持するためには、そこで働く人たちの「安心」や「安定」も確保される必要があります。

はむねっとは、この先、女性を働き手として広がってきたこの公務非正規問題を解決していくため、広く、公務非正規領域の仕事に従事する女性たち、働き手、また、この問題に関心を寄せる個人と共に、問題解決に向けた調査、提言を行っていく他、交流会や学習会などの企画を開催していきます。

その一つ目の取組として、以下のとおり、調査を実施しています。ウェブフォームを使った調査で、全国どこからでも回答できます。全国の現職で働く公務非正規のみなさんにも、ひとりでも多く声を聴かせていただき、個人が特定されない形で集計後、公表を予定しています。調査開始5日目(5/4)朝時点で30以上の都道府県で働く約200名の方から回答を得ています。

マスコミ各社におかれては、本件について、広く周知にご協力いただきますとともに、調査結果へのご注目もお願いいたします。

調査実施等への周知協力をいただいた社には、調査結果概要版(A4、3ページ程度)を、公表前(3日程度前)にお送りする予定です。

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)の調査概要

~調査は性別不問で行います~

調 査 名:非正規公務労働従事者への緊急アンケート

目 的:全国で働く、非正規公務労働従事者(性別不問)の置かれている現状を明らかにし、実態を踏まえた上で、今後の課題を把握するため。

対 象:現在、非正規で公務労働に従事している方(既に退職された場合でも、2019年4月から2021年4月に在職されていた方を含みます。)※性別不問

実査期間:2021年4月30日(金)~6月4日(金)23:59

調査趣旨:はむねっと公式HPから 

調査への回答方法:調査回答フォームから回答

公表方法:2021年の男女共同参画週間(6月23日(水)~29日(火))に、HP等で公表予定。

そ の 他:現職の方々にも、安心して回答していただけるよう、個人が特定されないよう最大限の注意を払って、集計した結果を公表いたします。

本件に関するお問い合わせ先

担当:渡辺、瀬山

連絡先:(後略)